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沖神前後篇の前篇のサンプルです。
オフラインもあとで更新します…パタリ。

表紙の低クオリティは仕様です(真顔


hyoushi-1.jpg


3Zの。




hyoushi.jpg
本編の。

2冊、出せそうです…。
しばらく絶食でもするか…(金欠

でもせっかくの夏コミなんで頑張った…よ…



本編沿いのほうはしょっぱなからR指定だったので冒頭ではなく、本文の一部抜粋です(…)
あ、前載せたのも抜粋か…まぁいいや…


ご興味のある方はどうぞ~

【本文抜粋】


***


其処にあった想いが愛だったのだと知ったのは、奇しくもその関係に幕を下ろさなければならないと覚悟を決めたその瞬間であった。



最初はどうしてそうなったのかを今となっては曖昧にしか思い出せないのに、その夢の中に居た最中の熱に浮かされた数え切れないやり取りは、醒めた後の脳にも鮮明に焼き付いていた。
それを愛だと言えなかった自分は酷い男なのだろうと思ったが、それを神楽がどのように受け止めていたのかまではわからなかった。
行為の理由を言わないことで成り立っていたとも言える二人の関係。
それは外側から見たら不自然で健全ではないのだろう。
それこそ、神楽の保護者代理である銀時にバレでもしたら何を言われるかわからない。
それくらい後ろめたい事を続けてきた。
けれど、その曖昧さにどうしようもなく安心していたことを否定できないのが事実だ。
そしてそれは多分、目の端に捕えた紫の傘の持ち主も同じだったはずだ。

「悪ィ、遅れたか?」
「あ、ううん。今来たネ」

いつもは約束などしていなかったが、今日は違う。
沖田のほうから万事屋に電話を掛け、神楽を呼びだしたのだ。
だから少しでも待たせた事に素直な謝罪を覚えた。
そんなことは今まで一度も無かった事で、神楽もその違和感に気付いているようだった。
受け答えに、少しだけ緊張の様なものが含まれている。

「ちょいと、話があるんでさァ」
「話?何アルか?面倒事はお断りアル」
「そんなんじゃねェよ。まぁ、別にテメーに言わなきゃいけないってわけでもないんだけどさァ…」
「だから何アルか!?ハッキリ言うヨロシ!」

沖田を真っ直ぐ見る目は、出逢った時から変わっていない。
総てを見通す様な透明な輝きの中にある深い蒼の優しさ。
その瞳に見つめられる事も、もうないのかもしれない。

死ぬつもりはない。
必ず帰ってくると近藤さんに約束した。

沖田は、本当の意味ではこれが最後なんかじゃないことを頭で理解していた。
けれどそれには何の確証もない。

最後じゃないかもしれない。けれど最後かもしれない。
だったら、最後のつもりで居た方が後で後悔しないのではないかと思い、決めた別離(わかれ)。


―――もし、戻ってこれたら、その時は…。


「俺…京へ行く事になったんでさァ」
「きょう…?」
「江戸から、ずっと離れた西の土地。攘夷浪士が勢いづいて、街が荒れちまってる」
「…どのくらい、遠いアル…?」
神楽の声は、少し震えていた。
「車で行っても、一日かかるなァ…」
「―――いつ、帰ってくるアルか?」
「…わからねェ。半年か一年か…もしかしたらもっとかかるかもしれねェ」

〝帰ってこれないかもしれない〟とはっきり言う事はできなかった。

そう言えば、優しくて強い彼女は付いてきてくれる気がした。だからこそ言えなかった。
何度も何度もこの腕に掻き抱いたその女に、されど愛を囁いた事など一度もなかった男がそんなことを言えるはずもない。
ただ、自分の恣意的な寂しさをぶつける為だけに共に居た存在。
受け止めてくれるその訳も訊く事のないまま、それを利用していたツケが回ってきたんだ。
居なくなるとわかっているのに今更本当の気持ちを言ったところで、神楽にとってそれは重荷にしかならない。


護りたいと思ってはいたけれど実際は護る必要がない位強いこの存在に、今までどれくらい助けられてきたのだろう。

「…もう会えない、のカ…?」
「……あァ―――そうかもな」


京から戻ってきた時、神楽はもう地球には居ないかもしれない。
駐在するのと同等のこの遠征。
帰ってこれるかわからないのも確かだが、帰ってこれるとしてもいつ頃かわからない。

あぁ、もしかしたら帰ってきた時、彼女は自分ではない誰かのモノになっているかもしれない。
想像した未来の可能性。
その光景に痛む心臓を今ここで抜き取ってしまいたかった。
苦しさも愛しさも、当て所もないこの悔しささえ、この心臓がなければ感じる事もないだろう。
それどころか、そんな資格さえもうないというのに、どの口が悔しいとのたまうのか。
自身の身勝手さに憤懣して吐き気がする。


沖田は俯いた神楽の頭を見下ろした。
ここで〝行かないで〟と泣いて縋られたら嬉しいのだろうかと、酷い事を考えていた。

酷い男だ。
必要な時に身勝手に縋っていたのは自分で、今も心のどこかで縋られる事を望んでいるのにも関わらず、それを拒む事しかできない自分を知っているのだから。


自嘲していた。
何か大事なものを諦めたような笑み。
諦めたのは己の心に秘めた本心なのか、それを求めなかった神楽の心なのか。

それともそのどちらもなのか―――。

そんな沖田の様子は、いつの間にか沖田を見上げていた神楽の目にどこか哀しく映る。

「ねぇ、哀しいの…?」

京へ行く事が?それとも神楽と離れる事が?
問いかけられても、もう、わからなかった。
だから、別のことで憂慮しているのだと――それ自体嘘ではないが――誤魔化した。

「先に京へ行った連中と連絡が取れねェ…もう何日も」
「それは…心配アルな…」


神楽が沖田の頬に触れた。
そこに付いていた小さな傷をなぞられる。指先は冷えていた。

その行為によって、沖田は随分長い間待たせてしまっていた事に初めて気付く。

「オマエ危なっかしいからナ!無理すんなヨ!」
「チャイ、ナ…」

笑いながら明るく言う神楽の瞳は揺れていて頼りなく、後押しの言葉に添える表情としては些か不釣り合いなものだった。
それでもきっと本人は笑えているつもりなのだろうと思うと、沖田の胸は締め付けられるかのように痛んだ。
けれど自分が神楽に与えてきた痛みを思えば、そんなものは比較にもならない。


だからせめて、最後くらいは優しくしてやりたいと願った。
その想いに突き動かされるままに、沖田は神楽の冷えた身体を引いた。
 
「――悪ィ…神楽、」

神楽は一瞬ビクリと身体を震わせたが、抱きしめられたその腕の強さが示す別れを感じて。
何故かそれに酷く納得がいってしまう自分を感じながら、揺れ惑うその瞳をゆっくりと閉じていった。

夢の終わりはいつだって唐突だ。
甘い蜜を垂れ流しにしておきながら、それに触れようとしたその時にはもう届かなくなっているのが常。

これはきっと、ずっと傍に居られると勘違いしていた自分への罰なんだと神楽は思っていた。

たった一言を最後のその時さえも伝えられなかった自分への、きっとこれは神の罰なのだろう。

言葉に出せない哀愁を指先に込めて、微かに血の匂いがする隊服に皺を作った。




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