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今から明日のオトメイト戦線のために出かけるので急ぎ足ですが、
明後日のうたプリオンリーのサンプルを載せます!


つづきからどうぞ。。。

明日ギリギリまで加筆するかもしれません…







どうしようもない愛しさは存在する。
 
 
おとぎ話の、その先に。





****


***
 
 
「……くん、 翔、くん?」

躊躇いがちに掛けられている声が、遠くから聞こえていた。
鼻をくすぐる甘い匂いの主はわかっているけれど、翔はまだふわふわとした夢の中を彷徨っている最中で、その香りに包まれたままもうひと眠りしてしまいそうになっていた。

「翔くん、起きて…… うぅ、気持ち良さそうだから起こしたら悪いかな……。あぁ、でも、どうしよう……?」
(…… どうしよう?って、なに、が、だ……?)

声の中に若干焦りが見え始めた頃、ようやく翔も覚醒し始める。

(ほんとは、もっとこうしてたいけどな……)

なんとなく思い出す。たぶんここは春歌の膝の上だ。
ちなみに此処は寮とはいえ、家の中。
自分達が恋人らしいことを許されるのはこの小さな部屋の中くらいだとわかっている。だからこそ、外では我慢している分いちゃつきたいというのが翔にとって本音。
デビュー後も、学園長との約束は守らなくてはならない。むしろ、社長と呼ぶべき立場となった今、当時よりも彼に従わなければならないというプレッシャーは強く圧し掛かっている。
勿論、約束は破られていない。翔と春歌が付き合っている事は、親しい友人たちを除き絶対に秘密で、他は悟られてしまうのもアウトなのだ。
本人達の努力の甲斐あって、今のところは支障なくうまくやっているが、春歌は些か無防備過ぎるところがあり、これが翔にとってはなかなか悩ましい問題となっていた。春歌の、ぽやぽやしているところは彼女の一番可愛いところと言える。いや、むしろ可愛くてたまらない。
だからこそ、翔は困り果てる。
周りから不本意にも可愛いと評されることの多い翔だが、思春期の男なことに変わりは無い。あまりに無防備すぎる春歌に、いつもやきもきさせられているのだった。

「はるかー……?」

完全に覚醒していないこの状態でさえ、翔の中で春歌への愛しさは募る。
自分を呼ぶ声、ただそれだけで抱きしめたくなる。名前の通り、春の歌みたいな暖かな気持ちが心を満たす瞬間だ。

「翔くん……? 起きた、の……?」
「……ねみィ……」
「えっ、翔く、え……っ!?」

声のするほうへ春歌の気配を求めると、やがて〝ふにっ〟という感触に辿り着いた。
そしてそのまま、正座をしていた春歌の腰に纏わりつく様な恰好になる。

「あ、あ、あのあのあの、翔、くん、」
「いーだろ……? 部屋でしかこんなことできねーんだから」

起き抜けの掠れた翔の声音はいつもより少し低くてドキドキする。春歌はそう思いながら、しかし、目的を思い出したのかハッとして翔を引きはがした。

「翔くん!」
「……春歌?」

あまりに容易くぺりっと離れられたことが思いの外ショックで、翔の目も一気に覚める。
春歌もそんな翔の様子に気付いたのか、小さい声で「ご、ごめんね……」とこぼし、その訳を告げた。

「あの、あのね、翔くん。 眠いのはわかるんだけど、もう、時間なの」
「……時間? ――――あ、」

咄嗟に何のことか理解できなかった翔だが、壁にある時計の針が指す時間を見た所でようやく気付く。
今日は午後から新曲のレコーディングがある日で、今は、その一時間前だった。
午前中はオフで、まだ時間があるからもう少しだけ寝たいと言って横になったところまでは覚えている。
そのつもりが、これだ。最近はありがたくも忙しい日々が続いていたので、身体は正直だと、そういうことなのかもしれないが、さすがに初めて行くスタジオで遅刻はまずい。

「ちょ……ば……っ!もうこんな時間かよ!?」
「う、うん、ごめん、もっと私が、ちゃんと考えて起こさなきゃいけなかったよね…」

翔くんが、気持ち良さそうに寝てたから起こせなくて……なんて可愛いことを言いながらしゅんと俯く春歌。
あぁもう、可愛すぎる!
……と、そんなこと言っている場合ではない。

「お前のせいじゃないって。 ちょっと良い夢見過ぎた俺のせい」
「良い夢?」
「ん、良い夢」

自分を責める春歌を安心させるようにくしゃりと髪を撫でる。
彼女が擽ったそうに目を細めるその瞬間が好きで、もう完全に癖になっているやり取り。

(……可愛い)

心の中で何百回思ったかわからないその言葉を、実際本人に言えたのはそれほど多くは無い。
けれど、それでも春歌は翔の傍で、翔の歌を作り、一緒に笑って、泣いて、また笑って……周囲に大っぴらにできない辛さや寂しさもあるだろうに、泣きごともわがままも言わずに、一緒に居てくれる。
幸せだと、思う。心から、寧ろこちらが、夢なんじゃないかと思うくらいに、切実に。

「……うっし! さっさと支度して行くか! 時間無いしな、俺のせいだけど」
「はい!」

二人きりの穏やかな時間が名残惜しくて、翔の手は自然と春歌の髪を梳き、頬を軽く撫でる。

「翔、く ――、……っ、」
「…… ごめん、な」

謝罪は、何に向けたものだったのか。
確かなのは、この空間を出たら二人は恋人ではなく、パートナーになるということで、おそらくは春歌に寂しい思いを強いる時間が来るということだ。
それはもう、慣れていることのようでもあったが、日に日にお互いを想う気持ちが強まる中で、耐えがたくなっているのも、また事実だった。
だが、いつしか反射的に出るようになった謝罪の言葉に首を振り、春歌の手が翔を捉えた。

「……大丈夫、です」
「春歌、」
「翔くんの歌を、曲を作れて、私幸せです。
すごく、すごく、幸せです。そのためなら、……傍に、いるためなら、なんだって、我慢します。
……だって…、」

その先を言うことを躊躇ったのか、恥ずかしそうに睫毛を伏せる。
学生の時はあまり見せなかった細かな仕草に、鼓動が高鳴るのは気のせいなんかじゃない。

「だって……、だいすき、ですから」
「――――っ!」

どうにもならない衝動を押え込む。これから、仕事だ。
けれど――――、

「俺、も」

ぼそりと呟いて、二人で真っ赤になって手を握り合う。
それだけで、幸せだと思えた。

どうしようもなく。

これ以上なく。



***


こんな感じで30Pほど翔春でビタ甘。

ベタでなくビタ。ビターねwww


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